八八水害の緊急対応は、被災地が広域に及び、情報の不足、交通の途絶、二次災害の危険などにより、極めて困難なものになった。予想を大きく上回る雨量であったとはいえ、緊急対応の遅れなど、政府の対応に対し大きな批判が巻き起こった。
これに対し、災害後20日後には重建特別条例が成立し、災害後1カ月後には復興ガイドラインである重建綱要計画が成立させるなど、復興へ向けての体制づくりや計画策定、さらに執行への動きが加速された。
今回の八八水害の復興を最も大きく特徴づけるのは、被災した地域の内、今後危険とみなされる地域を「特定区域」に指定し、指定された区域内には居住や耕作を認めず、その代わりに、別の場所に政府が土地を用意し、そこに民間の支援団体が建設した復興住宅「永久屋」を無償で提供しようとするもので、今回の災害で採用された新たな復興方式である。
まず、被災した集落などの安全評価を実施し、不安全と評価された集落(約100か所)について、「特定区域」を指定する方針が示された。しかし、特定区域指定に対する不安や疑念は大きく、特に、原住民族の人たちにとっては、永久屋の提供と引き換えに、自分たちの故郷(原郷)を失うことになるのではないかとの見方は根強く、安全を名目とした強制移転に反対する動きが広がった。
永久屋は、政府が土地を用意し、建物は民間の支援団体や企業が建設して被災者に無償で提供するもので、最初の永久屋団地である杉林郷の大愛園区は、災害の半年後には完成し、入居を開始した。しかし、これら永久屋の多くは被災した集落から遠く離れた平地にあり、現地再建を目指す人達は、元の村落の農地に避難屋を建てるなど、現地に留まる様々な試みを行っている。
このように、災害復興の過程で一つの村落が幾つかに分かれる事例があり、又、村落によっては全村移転する事例もある。今年の8月には2年を迎えるが、山岳地の集落では、なお交通が正常化していないところも多く、産業回復を含めた復興を実現するには、多くの課題が山積している。
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